目次
社会に溢れるクソどうでもいい仕事
私たちの労働時間はなぜこれほどまでに長いのか。
無駄で無意味な仕事がどうして社会にありふれているのか。
社会に貢献できる仕事ほど賃金が低くなるのはなぜか。
会社員として働く方であれば、一度はこのような疑問を抱いたことがあるのではないでしょうか。
こうした現象に経済学の視点から革新的な考察を示した学者がいます。
NY出身、デヴィット・グレーバー。
著書「ブルシット・ジョブ~クソどうでもいい仕事の理論~」を読了したので、感想とレビューを書いていきたいと思います。
ブルシットジョブとはなにか
まずは本書のタイトル「ブルシットジョブ」の語句から詳しく見ていきましょう。
ブルシットジョブの定義とは
ブルシットジョブ(bullshit-job)とは、本人でさえその存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある雇用の形態である。
とはいえ、その雇用条件の一環として、本人はそうではないと取り繕わなければならないように感じている。
以上がブルシットジョブの定義です。
ただの「どうでもいい仕事」というだけでなく、「本人がそうでないフリをしている」という点がポイントです。
管理担当から「サボっているのでは?」と思われないように、意図的に忙しいフリをした経験は思い当たる方が多いのではないでしょうか。
「クソどうでもいい仕事」が増えている
ブルシットジョブの例として、次のような5つの例が挙げられています。
- 取り巻き
- 脅し屋
- 尻ぬぐい
- 書類穴埋め人
- タスクマスター
アメリカと日本の雇用形態の差によって若干異なる点もありますが、最もブルシットジョブとしてわかりやすい例が「タスクマスター」でしょう。
自らは何もせず、他人に仕事を割り当てるだけの中間管理職が大くの企業にあふれているのは周知の事実です。
本書で取り上げられているインタビューでは、自分がいなくなっても問題なく組織は回ることに気づいていながら、あたかも自分が組織の中に必要なフリをし続けている管理職が出てきます。
まさしく「ブルシットジョブ」の典型例です。
そのような仕事が世の中にはありふれています。
さらに、ブルシットジョブはいまも世界的に増え続けているのです。
ブルシットジョブが与える社会への影響
ブルシットジョブは一般的に、労働条件が極めてホワイトであることが多いのも特徴です。
新型コロナウイルスの流行で「エッセンシャルワーカー」という語句が注目されました。
医療や介護従事者など人々の生活に密接した必要不可欠な仕事全般を指します。
おそらくブルシットジョブの対義語に近い語句といえます。
エッセンシャルワーカーは人の生命を預かり昼夜問わず奔走する一方、クソどうでもいい仕事をこなしながら机に座り続けるだけのブルシットジョブ従事者が存在します。
ここには労働条件よりも大きな違いがあります。
「仕事の価値」、あるいは「やりがい」と呼ばれるものです。
人のためにならない、無くなっても誰も困らない仕事。
そんなブルシットジョブに価値がないと気付きながら働き続ける方々は、日々肉体的苦痛よりもはるかに大きな精神的苦痛を強いられているのです。
社会的にメンタル不調者が増加しているのは決して日本だけの問題ではありません。
そして、根深い所にブルシットジョブが関わっているのです。
歴史上最も過酷な拷問は『穴を掘っては埋め続ける』
ブルシットジョブが与える精神的苦痛が非常に過酷であることは歴史的にも証明されています。
昔の欧州で囚人たちに看守が命じたのは「一日中穴を掘って、埋めてを延々と繰り返す」という拷問。
肉体労働は得意であろう屈強な囚人でさえも、一週間も経過すれば皆が音を上げ、中には発狂する者もいたといいます。
人間は意味のない作業を続けることに強い精神的苦痛を感じ、やがて必ず限界を迎えるのです。
肉体労働を頭脳労働に置き換えても同じことがいえます。
仕事が無意味で無価値であると気付きながら働き続けることは、どんな屈強な人間でも耐えられないのです。
したがって、ブルシットジョブが増え続ける社会では、比例してメンタル不調者が増加します。
『ブルシットジョブ』総括・レビュー
本書では多くのインタビューや事例を交えながら、社会における仕事の役割を多方面から深く考察しています。
現代社会に対する疑問を紐解く大きなきっかけとなるかもしれません。
「ブルシットジョブ」は今後ますます一般的な語句となることは間違いないでしょう。
ページ数は多めですが、読む価値は大いにあります。
当サイトでは各種自己啓発コラムを記載しています。