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誰もがストレスからの解放を求めている
「メンタルヘルス」「こころの健康」といった言葉を頻繁に耳にします。
ストレス社会と呼ばれる現代、6~7人に1人は一生のうちにうつ病を経験するといわれています。
うつ病をはじめとする精神疾患は決して「心の弱い人」だけの問題ではありません。
いまは健康だと思っている方も、何かのストレスがきっかけとなり、突然ポッキリと心が折れてしまうこともあります。
ストレスとこころの病気
ストレスという言葉の定義を再確認しましょう。
ストレスとは「刺激(ストレッサー)が与えられたときに生じる、緊張状態や生体の歪み」を指します。
ストレッサーはさまざまです。
- 環境的要因:暑さ・寒さ、騒音
- 身体的要因:病気、疲労、睡眠不足
- 社会的要因:仕事上の問題、多忙
このように、日常の中のさまざまな変化がストレッサーとなり得ます。
ストレッサーに対する反応はストレス反応と呼ばれます。
心理面のストレス反応にはイライラ、不安、抑うつなど。
身体面のストレス反応には頭痛、食欲低下、便秘や下痢などがあります。
ストレスによる疾患の例としては下記が挙げられます。
- 精神神経科的疾患:気分障害・神経性障害など
- 内科的疾患:高血圧症、狭心症、胃・十二指腸潰瘍など
なお、本記事は宗教やマルチ商法の勧誘でもなければ、後述するアドラー心理学の押し付けでもありません。
ストレスからの解放に関する一意見としてお読みください。
ストレスは個人差が大きい
ストレッサーには多くの種類がありましたが、心身の不調との結びつきは個人差が非常に大きいです。
同じストレッサーを受けても、疾患に繋がる方と平気な方がいます。
自分が平気だからと言って、同じ環境にいる他の方も平気とは限りません。
周りの方が平気そうでも、自分は気付かない内にストレスが蓄積しているということもあります。
それでは、こうしたストレスとどう向き合えばよいのでしょうか。
あらゆるストレスは人間関係
ストレスをはじめとするあらゆる悩み事はすべて「対人関係によるもの」という持論を提唱した精神科医がいます。
オーストリア出身で個人心理学の創始者、アルフレッド・アドラーです。
アドラーの教え
結論から述べると、アドラー心理学を理解することでストレスとの向き合い方が変わります。
ただし、この思想を理解するにはハードルを乗り越えなくてはなりません。
今まで生きてきた中での常識にとらわれず、新しい考え方を受け入れる覚悟が必要です。
ある本では、この覚悟のことを「嫌われる勇気」そして「幸せになる勇気」と呼んでいます。
アドラーの考え方について少し噛み砕いて述べていきましょう。
引用の都合上、「悩み」という言葉が多く出てきますが、本記事においては「悩み」は「ストレス」の広義として扱います。
全ての悩みは対人関係
「悩みを消し去るには、宇宙の中にただひとりで生きるしかない」
アドラー心理学の根底ともいえる概念です。
私たち人間は全員、社会と何かしらの関わりを持ち、対人関係の中で相互に影響し合って生きています。
すなわち、対人関係が存在しなければ人々の思考も行動も存在しないのです。
対人関係論とも呼びます。
劣等感など他人と比較して起こる悩みはもちろん、お金の悩みや病気の悩みなどもすべて根底は「対人関係の悩み」にあるのです。
この部分の受け止め方が、後述する「ストレスからの解放」と大きく繋がります。
多くの方が望む「組織からの解放」
「ストレスからの解放」というと、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは、退職や転職、あるいは起業などではないでしょうか。
学生であれば、退学や転学など。
上司や教授とうまくいかない、怒鳴られてばかり、残業ばかりで自分の時間がない。
こうした悩みからの解放の手段として、「組織からの解放」を望む方も多いことでしょう。
たしかに、環境を変えることは1つの手段です。
実際、退職や転職によって人生が好転したという方もたくさんいます。
しかし前述した通り、「環境の変化」はそれ自体がストレッサーでもあります。
組織から抜け出したけど、引きこもりになってしまった。
自由になったつもりなのに、先行きが不安になった。
このように環境の変化によって新たなストレスを引き起こす場合もあります。
アドラーの言葉を借りるならば、組織からの解放は「ほんとうの自由」ではないのです。
ほんとうの自由とストレスについて、さらに深く考えてみましょう。
ストレスから解放されるために
安易な「ストレス解消法」に頼らない
ストレスにさまざまな要因があるように、ストレス解消法もさまざまな手段があります。
ストレス解消法としてよく挙げられるものは下記のとおりです。
- 休養を取る
- 気分転換をする
- 趣味に没頭する
- 友人や家族に相談する
- 病院に行って薬を処方してもらう
いずれも有効な手段ですが、気を付けたいのは対症療法としてストレス解消法を安易に用いることです。
表面化した問題を緩和させるだけでは、すぐにストレスは蓄積します。
精神疾患にかかりやすい方の特徴として「真面目な方」がよく挙げられますが、真面目な方ほど焦って即座にストレスを減らそうと安易な方法に走りがちです。
ひとたび精神疾患にかかれば、回復までには「寛解」、「再発抑制」、「社会機能の回復」といった多くの段階があります。
ストレスは容易に消えるものではなく、蓄積すればするほど回復までの道のりが難しくなります。
ほんとうの自由とストレス
前述の通り、人間の悩みはすべて対人関係によるものです。
この前提に立つと、一時的な気分転換や薬などでストレスから解放されるなどあり得ないことは明白でしょう。
また、転職や起業などで環境を変えてみても、結局は対人関係のなかに存在する以上、ストレスからは逃れられないことになります。
対人関係で人は苦しみ、対人関係から逃れるには宇宙にただひとり生きるしかない。
つまりは不可能です。
それでもアドラー心理学では「諦めろ」と切り捨てているわけではありません。
「対人関係の悩みを解決すれば、誰もが幸福になれる」と言っているのです。
ストレスからの解放とは
対人関係の悩みを解決し、自由を手に入れるためにはどうすればよいか。
アドラーの示す答えは明確です。
- 他者の評価にとらわれず、自分の生き方を貫く
- たとえ承認されずとも他者に貢献する
- 他者は味方であるという認識を持つ
悩みの根源を対人関係としながら、対人関係によって幸福を得ることができる。
世界は対人関係であり、ストレス、悩み、自由、幸福、すべては対人関係の中にあるのです。
他者にどう思われようと、嫌われようと、自分の生き方を自由に生きて、幸福なる対人関係を築く。
これらは「課題の分離」や「共同体感覚」という言葉で表現されます。
一点注意していただきたいのが、アドラー心理学をストレス解消法として安易に取り入れてしまうことです。
詳しい思想を知らずにキーフレーズだけ覚えたとしても、対症療法にしかなりません。
アドラー心理学はストレスから解放される根本的な方法ですが、数時間、数日で思想を理解できるようなものではありません。
前述した「嫌われる勇気」を入門書とし、さらに多くの本を読むと良いでしょう。
現代社会において誰もが求める「ストレスからの解放」。
アドラー心理学は、必ずしもその解決策になるとは限りません。
しかし、私たちが自らの力で人生を歩む上での大切な道標になります。
必要なのは、踏み出す勇気です。